複数内定の比べ方と辞退の伝え方|承諾後に断るときの考え方も
- 比べる前に、各社の条件を「労働条件通知書(または内定通知の条件提示)」で同じ項目にそろえる。口頭の説明は比較に使わない。
- 決め手は「転職理由が解消されるか」。年収・勤務地・仕事内容のうち、自分が譲れない1つを先に決めておく。
- 辞退は決めた当日に電話+メールで。承諾後の辞退も法的には可能と考えられているが、早く・誠実に伝えるのが前提。
比べる前に、条件を同じ形にそろえる
複数の内定を比べるときに一番多い失敗は、各社から聞いた情報の「粒度」がばらばらなまま比べてしまうことです。A社は年収の総額で、B社は月給で、C社は面接で聞いた「だいたいこのくらい」で覚えている、という状態では比較になりません。
まず、各社から書面で条件を受け取ります。内定時には労働条件通知書、または条件が書かれた内定通知書(オファーレター)が出るのが一般的です。出ていない場合は、承諾の前に書面を依頼して問題ありません。確認すべき項目は内定後に労働条件通知書で確認することにまとめています。
2024年4月からは、労働条件の明示事項に「就業場所・業務の変更の範囲」が加わっています(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」、2026年9月時点で確認)。転勤や職種変更の可能性はここに書かれるので、比較表に必ず入れてください。
比較表の作り方
横に会社、縦に項目を並べた表を1枚作ります。空欄が出た項目は、その会社に確認する質問リストになります。
| 項目 | A社 | B社 | 確認メモ |
|---|---|---|---|
| 理論年収(固定分) | 賞与を除いた月給×12 | ||
| 賞与の算定方法 | 「前年実績」か「業績連動」か | ||
| 固定残業代 | 何時間分か、超過分は別途支給か | ||
| 勤務地と変更の範囲 | 転勤の有無 | ||
| 業務と変更の範囲 | 配属先が確定しているか | ||
| 試用期間と条件 | 期間中に給与が変わるか | ||
| 休日・休暇 | 年間休日、有給の付与時期 | ||
| 入社日 | 現職の退職日と合うか |
年収は「固定分」と「変動分」に分けて書くのがポイントです。賞与込みの提示額は、業績次第で下がる部分を含んでいます。固定残業代を含む月給も、残業が少ない職場なら実質的な時給は変わりません。
- 全社の条件が書面(メールでも可)で手元にある
- 年収を固定分と変動分に分けて書いた
- 固定残業代の時間数と超過分の扱いが分かる
- 勤務地・業務の「変更の範囲」を確認した
- 入社日が現職の退職スケジュールと合っている
決めきれないときの判断軸
表を埋めても決めきれないのは、どの会社にも長所と短所があるからです。ここで効くのは「そもそもなぜ転職しようとしたか」に戻ることです。
- 転職理由を1行で書く(例:「評価が年功で、成果が給与に反映されない」)。
- 各社について、その理由が解消されるかを「○・△・×」で付ける。根拠は面接で聞いた事実に限る。
- ×が付いた会社は、他の条件が良くても候補から外す。
年収が上がる会社と、転職理由が解消される会社が違う場合は迷いどころです。年収が下がる選択肢を取るかどうかは年収が下がる転職を受けるかの判断基準で考え方を整理しています。
面接官や社員の印象は判断材料になりますが、比較表には「事実」と「印象」を分けて書いてください。入社後に一緒に働く人が面接官とは限りません。
辞退の連絡は「決めた当日」に
入社先を決めたら、辞退する会社にはその日のうちに連絡します。企業側は辞退が分かれば次の候補者に連絡できるので、早いほど迷惑が小さくなります。
- 連絡の手段:採用担当に電話し、つながらなければメールを送り、あとで電話をかけ直す。エージェント経由の応募なら、まず担当エージェントに伝える(企業への連絡はエージェントが行うのが一般的)。
- 伝える内容:辞退の結論、お礼、簡単な理由。理由は詳しく言う必要はありません。
- 避けること:他社の社名や条件を出して比べること、連絡をせずに期限を過ぎること。
電話での辞退(承諾前)
「お世話になっております。先日内定のご連絡をいただきました〇〇です。採用ご担当の△△様はいらっしゃいますでしょうか。
……
このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。大変ありがたいお話でしたが、検討の結果、今回は辞退させていただきたく、お電話いたしました。選考でお時間をいただいたにもかかわらず、申し訳ございません。」
メールでの辞退(承諾前)
件名:内定辞退のご連絡(〇〇 〇〇)
株式会社△△
人事部 □□様
お世話になっております。〇〇 〇〇です。
先日は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
慎重に検討いたしましたが、自分の希望する働き方と照らし合わせた結果、今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
本来であればお伺いしてお伝えすべきところ、メールでのご連絡となり申し訳ございません。
面接では貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
理由を聞かれたとき(短く答える)
「他社からもご縁をいただき、担当する業務の内容を比べて、そちらに決めました。御社の選考で伺ったお話は大変参考になりました。」
承諾したあとに辞退する場合
内定承諾書を出したあとに、より志望度の高い会社から内定が出ることもあります。この場合の考え方は次のとおりです。
- 採用内定によって労働契約が成立したと判断される場合がある、というのが裁判例の考え方です(厚生労働省「確かめよう労働条件」採用内定の取消に関する裁判例)。
- 期間の定めのない雇用契約については、民法627条1項で「いつでも解約の申入れをすることができる」とされ、申入れから2週間で終了すると定められています(e-Gov法令検索 民法、2026年9月時点で確認)。
- 厚生労働省の事業者向けQ&Aでは、内定成立後の一方的な辞退は事由によって損害賠償責任が問題になる場合があるが、本人の意思に反して就労を強制することはできない、という整理が示されています(厚生労働省 スタートアップ労働条件 Q&A)。
つまり、承諾後の辞退も法的に不可能ではありませんが、企業がすでに入社準備(備品の手配や研修の予定など)を進めていることを前提に、分かった時点ですぐ、電話で直接伝えるのが最低限の対応です。
承諾後の辞退(電話)
「内定承諾のご連絡を差し上げたにもかかわらず、大変申し訳ございません。家族とも改めて話し合った結果、入社を辞退させていただきたく、お電話いたしました。ご準備を進めていただいていたことと存じます。ご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございません。必要な手続きや書類がございましたら、ご指示いただけますでしょうか。」
承諾書に違約金の定めがある、会社から費用の請求を受けた、などの個別の事情がある場合は、自分で判断せず、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
次にやること
- 各社から条件を書面で受け取り、比較表を1枚作る。空欄はその会社への質問にする。
- 転職理由を1行で書き、各社に○・△・×を付ける。
- 回答期限が迫っている会社があれば、内定の回答期限と保留の頼み方を見て期限の相談をする。
- 入社先を決めたら、辞退する会社にその日のうちに電話し、メールでも残す。